新規事業の検討や提案の準備で、競合の製品、価格、導入事例を把握したい。こうした調査にAIを使うとき、完成した比較表の見やすさだけで実用性を判断しないことが大切です。判断に使いたい情報が含まれ、その根拠をたどれるかまで確認する必要があります。

本稿は公開された公式資料を踏まえた調査手順の提案です。PIXEL COREが同条件でツールを比較した実験結果や、特定市場の独自調査を示すものではありません。以下の例も、進め方を説明するための仮例です。

調査を支援できることと、残る限界

OpenAIはdeep researchについて、Web上の情報を調べ、複数の情報源を統合して出典付きの報告を作成する機能として説明しています。公式発表には2026年2月の更新として、検索先を信頼できるサイトに絞る機能なども記載されています。1

一方、OpenAIのヘルプは、ChatGPTが誤った事実や存在しない参照先を生成する場合があること、重要な情報は信頼できる資料で確認すべきことを説明しています。検索ツールを使っても、対象サイトへアクセスできない場合があります。2

PIXEL COREとしては、AIを候補の発見、文書の整理、比較観点の洗い出しに使い、人が重要な根拠を確認する進め方を提案します。リンクの数が多いことと、結論が正しいことは同じではありません。引用先に書かれている範囲を超えて、AIが推測を足していないかを確かめます。

最初に「何を決めるための調査か」を固定する

例えば法人向けの問い合わせ対応ツールを検討するなら、「主要企業を調べる」だけでは範囲が広すぎます。自社の参入余地を考えるのか、導入候補を選ぶのかで、必要な比較項目は変わります。

導入候補を選ぶ仮例なら、対象地域、企業規模、必要な機能、利用人数、予算の考え方を先に置きます。そのうえで、公式の製品ページ、料金ページ、ヘルプ、提供条件を優先して調べるよう指定します。対象期間と調査の締切も決めると、情報をどこまで更新するかが明確になります。

同じ名前の機能でも、プランや地域によって提供範囲が違う場合があります。料金を比べる際には、月払い・年払い、利用人数、従量料金、初期費用といった条件を別々の欄に分けます。公開されていない金額を、類似企業の価格から埋めないことも、最初の指示に含めます。

収集から比較まで、五つの工程に分ける

以下はPIXEL COREが提案する基本の進め方です。

  1. 候補を集める。 企業名、製品名、公式URLを一覧にする。同じ企業の別製品や名称変更を整理する。
  2. 原資料を確認する。 公式ページを開き、比較に必要な記述と確認日を残す。読めなかった資料はその旨を記録する。
  3. 条件をそろえる。 対象地域、プラン、期間、単位などを照合し、比較できない項目は分ける。
  4. 重要な主張を裏取りする。 採否に関わる価格や機能は、人が元資料の該当箇所を確認する。
  5. 示唆をまとめる。 確認できた事実と、そこから導く仮説を分け、次に確認すべき点を示す。

成果物には「企業・製品」「比較項目」「確認できた事実」「対象条件」「出典URL」「確認日」「未確認事項」の欄を持たせます。情報が見つからない場合は空欄を理由付きで残します。「不明」は調査の失敗を隠す表示ではなく、追加確認が必要な箇所を示す情報です。

鮮度・正確性・網羅性を別々に確認する

鮮度は、記事の公開日だけで判断できません。最近公開された記事が、古い発表を紹介している場合もあります。料金のように更新される情報は、現在の公式ページと、参照した日時をセットで扱います。過去の時点を比較する調査では、その時点の資料を探す必要があります。

正確性の確認では、数字や条件を元資料まで追います。例えば「利用企業数」は、契約社数、無料利用を含む登録社数、累計導入社数で意味が異なります。対象範囲が異なる数字を、ひとつのランキングに並べないようにします。複数の記事が同じ発表を参照している場合、それだけで独立した裏づけが増えたことにもなりません。

網羅性については、検索結果に出た企業だけで市場全体を代表できるかを検討します。検索語や言語を変える、業界団体や展示会の出展者一覧を確認する、顧客へのヒアリングで比較対象を聞くなど、候補の探し方を複数用意します。それでも「すべて調べた」と断定せず、対象と除外条件を報告に残します。

実用性を確かめるなら、確認作業も評価に含める

社内で試す際は、同じ問いと比較項目を使い、人が調べる場合とAIを使う場合を比べる設計が考えられます。所要時間に加え、重要項目の欠落、出典の正しさ、修正した箇所、未確認のまま残った項目を記録します。これは検証方法の提案であり、本稿で実施した結果ではありません。

AIが短時間で表を作っても、出典をすべて探し直す必要があれば、その作業を含めて評価します。また、誤りの件数だけでなく、意思決定への影響も見ます。軽微な表記の違いと、導入の可否を左右する機能の誤認では、同じ一件でも重みが違います。

PIXEL COREの考察:調査を、次の確認につなげる

競合調査の成果は、整った資料を作ることだけではありません。何が分かり、何がまだ分からず、次にどの判断や確認へ進めるかを明確にすることです。

例えば、公開情報では自社の想定顧客に合う導入事例が見つからなかったとしても、「その企業は対応できない」とは断定できません。公開情報の限界として残し、問い合わせやヒアリングの確認項目に変えます。AIによる収集・整理と、人による根拠の確認・解釈を組み合わせることで、判断に使える調査を目指したいと考えます。